絶版車 MTGarage

Z伝説の始まり

1967年、それは「N600計画」と名付けられ、開発が進められていた....

当時、オートバイの隆盛期を迎えていたアメリカにおいて、
カワサキが販売していた2スト3気筒の「マッハⅢ」、
目黒の流れを汲む650ccの「W1」は、アメリカ市場において、
4ストロークが主流となりつつ時代の流れに乗れず業績が悪化していた。

絶版車 MTGarage Kawasaki Mach3
絶版車 MTGarage Kawasaki Mach3

そこで次なる戦略として開発を進めたのが、当時としては未知のメカニズムだったDOHC4気筒エンジンを積む750ccのマシンの開発であった。
この開発は、1969年の市販を目指し、すでに実装テストの段階まで来ていたが、1968年の東京モーターサイクルショーで、ホンダが市販車初の空冷並列4気筒エンジン(OHC)を搭載した「CB750FOUR」を発表した。

このCB750FOURの発表により、カワサキが開発を進めていた並列4気筒750ccがあまりにも似通ったマシンとなってしまう為、「N600計画」とされる開発は方向転換を余儀なくされることになる。。。

ニューヨーク・ステーキ作戦

絶版車 MTGarage Kawasaki Z1 superfour

方向転換を余儀なくされたカワサキは、当時アメリカで人気を博していたハーレーダビッドソンのスポーツスター(XLCH)にならい、N600をベースに排気量設定を900ccに上げた。
この開発は、新たに「ニューヨークステーキ作戦」と名付けられ開発が進められた。

ちなみに、この名前の由来は、当時の北米では多気筒をステーキ、単気筒を
ロブスターと俗称を用いていた事からカワサキの本拠地(兵庫県)から神戸牛の
特上ステーキ「900ccのマシン」を北米市場に提供しようと言う意味で付けられた。

この開発こそ、「kawasaki 900 super 4」通称 Z1の開発となる。

最高傑作

先に発表された、『HONDAのCB750FOURを超える。』を命題に、メカニズムからエンジン性能を、耐久性、メンテナンス性、ハンドリング、装備まで、当時の世界最高水準で開発がすすめられ、現在(2018年)のオートバイ開発では考えられないくらいのコストをかけた開発となった。
耐久テストにおいては、アメリカで2回にわたり5000マイル耐久テストを行うなど徹底した検証の末に出来上がった。満を持して、カワサキは 900 Super 4 通称 Z1の開発に成功したのであった。

絶版車 MTGarage Kawasaki Z1 1972

世界を圧巻

2年6月から生産が開始され、他に類の無い操縦安定性や、爆発的な動力性能、コーナリング性能が高く評価され、輸出開始と爆発的なヒットとなり、世界中にブームを巻き起こした。
また、欧米のレースにおいても、大活躍を収めることとなる。
結果的に、ホンダを含むオートバイメーカーはZ1を追いかけることとなった。

そして、Z1が多くのライダーを魅了する新たな伝説が刻まれていく.....

開発よもやま話

・1972年1月の、ロサンゼルスでの公道テストにおいて、販売前モデルを行動で走らせるわけにもいかないため、HONDA CB 750Fourを装い車体カラーや、タンクのエンブレムをCB750FOURに仕様にしたそうです。

・最初のプロトタイプ、"V1"と言われるモデルは、茨城県の谷田部試験場を最初に走ったといわれています。

サービス情報

年式 '73 '74 '75
車種 / 項目 Z1 Z1A Z1B

■エンジン

型式 4ストローク 4気筒 DOHC 4ストローク 4気筒 DOHC 4ストローク 4気筒 DOHC
総排気量(cc) 903 903 903
ボアストローク(mm) 66×66 66×66 66×66
圧縮比 8.5:1 8.5:1 8.5:1
最大出力(ps/rpm) 82/8,500 82/8,500 82/8,500
最大トルク(kg-m/rpm) 7.5/7,000 7.5/7,000 7.5/7,000
始動方式 セル/キック併用 セル/キック併用 セル/キック併用
潤滑方式 ウェットサンプ式 ウェットサンプ式 ウェットサンプ式
バルブタイミング 吸気開BTDC 30° 30° 30°
吸気閉ABDC 70° 70° 70°
排気開BBDC 70° 70° 70°
排気閉ATDC 30° 30° 30°
バルブクリアランス(冷却時) 0.05~0.1 0.05~0.1 0.05~0.1
点火時期(BTDC) クランク角(") 5~40 5~40/20~40 20~40
ピストン位置(mm) 1.81 1.81 1.81
ポイントギャップ(mm) 0.35 0.35 0.35
ピストンとシリンダーのクリアランス 60~79 60~79 60~79

■キャブレター

型式 Mikuni VM28SC Mikuni VM28SC Mikuni VM28SC
メインジェット 112.5-R 112.5-R 112.5-R
ニードルジェット P-8 O-8 O-8
ジェットニードル 20 17.5 17.5
パイロットジェット 20 17.5 17.5
カットアウェイ 2.5 2.5 1.5
エアスクリュー 1と4分の1 1と4分の1 1と4分の1
油面(mm) 3.5±1 3.5±1 3.5±1
識別刻印 1470 2170 2170

■ミッション・クラッチ

型式 5段、常時噛合、リターンチェンジ式 5段、常時噛合、リターンチェンジ式 5段、常時噛合、リターンチェンジ式
ギア比 1速 3.17 3.17 3.17
2速 2.19 2.19 2.19
3速 1.67 1.67 1.67
4速 1.38 1.38 1.38
5速 1.22 1.22 1.22
一次減速比 1.73 1.73 1.73
二次減速比 2.33 2.33 2.33
総減速比 4.92 4.92 4.92
ミッションオイル SAE 10W 40 SAE 10W 40/10W 50/20W 50 SAE 10W 40/10W 50/20W 50
ミッションオイル容量(ℓ) 3.7 3.7 3.7
クラッチ 形式 湿式多板式 湿式多板式 湿式多板式
リレーズの調整 1/2 1/2 1/2
レバー遊び(mm) 2~3 2~3 2~3

■電気装置

コンデンサ容量 0.25 0.25 0.25
ヒューズ(A) 20 20 20
点火方式 バッテリー点火 バッテリー点火 バッテリー点火
スパークプラグ 型式 NGK B8ES NGK B8ES NGK B8ES
プラグギャップ 0.7~0.8 0.7~0.8 0.7~0.8
ダイナモ メーカー 国産 国産 国産
型式 AR3701 AR3701 AR3701
イグニッションコイル メーカー 国産 国産 国産
型式 IG3303/IG13304 IG3303/IG13304 IG3303/IG13304
レギュレーター メーカー 国産 国産 国産
型式 RS2118 RS2122 RS2122
バッテリー メーカー ユアサ ユアサ ユアサ
容量 12V14AH 12V14AH 12V14AH
型式 12N14-3A 12N14-3A 12N14-3A
スターター メーカー ミツバ ミツバ ミツバ
型式 SM-256-K SM-256-K SM-256-K
充電電流(A/rpm) 9.2/1,500 9.2/1,500 9.2/1,500
ターンシグナルリレー 12V23W×2+3.4W 12V23W×2+3.4W 12V23W×2+3.4W
ホーン 12V2.5V 12V2.5V 12V2.5V

年式別モデル説明

1972 / 1973
絶版車 MTGarage Kawasaki Z1

900 super 4 (Z1)

初期モデル


エンジンNo:  Z1E 00001 - 19999
フレームNo:  Z1F 00001 - 19999

■プロトタイプ

1972年1月から

V1E 00001 - 不明
V1F 00001 - 不明

1972年5月から

Z1F 90001 - 90020

1972年7月から

Z1F 90021 - 90049

出来事

1972年(昭和 47年)

・上野公園でパンダ公開

・ホンダがシビックを発売

・ホットパンツが流行

絶版車 MTGarage Kawasaki Z1 1972 出来事1 絶版車 MTGarage Kawasaki Z1 1972 出来事2
1973年(昭和 48年)

・オイルショックによる物価価格が高騰

・オセロゲームが発売

・映画「仁義なき戦い」が公開

絶版車 MTGarage Kawasaki Z1 1973 出来事1


1974
絶版車 MTGarage Kawasaki Z1A 1974

Z1 - A

イエローとオレンジのカラーイメージが、
後のZ1-Aのカラーリングに継承された。
73年モデルまでタンクマークが小さいのが特徴。


エンジンNo Z1E 020001 - 047497
フレームNo Z1F 020001 - 047499

出来事

1974年(昭和 49年)

・セブンイレブンが東京都江東区豊洲に第一号店を出店

・ハローキティ―が誕生

・フィンガー5 「恋のダイヤル6700」がヒット

絶版車 MTGarage Kawasaki Z1A 1974


1975
絶版車 MTGarage Kawasaki Z1B 1975

Z1 - A

75年型のカラーリングは、通称「玉虫カラー」と呼ばれている。


エンジンNo Z1E 047500 - 085847
フレームNo Z1F 047500 - 085648

出来事

1975年(昭和 50年)

・伝説のロックバンド、キャロルが解散

・日本コカ・コーラより缶コーヒー「ジョージア」を発売

・映画「トラック野郎」シリーズの第一作目が公開

・玩具 黒ひげ危機一発(タカラトミー) 発売

絶版車 MTGarage Kawasaki Z1B 1975 出来事1 絶版車 MTGarage Kawasaki Z1B 1975 出来事2

参考記事:                                              

モーターマガジン社 2009年9月29日発刊 オートバイClassics「Zから始まる物語」              

wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AF%E3%82%B5%E3%82%AD%E3%83%BBZ1